【女性起業家が乗り越えた壁】粘土のような遊べるクッキーでレゴを目指す | coloridoh(コロリドー)
- 功嗣 川瀬
- 5月12日
- 読了時間: 4分
▼出演者 Coloridoh Inc. / 代表:竹内ひとみ様
1974年兵庫県生まれ 4児のママ。Shibuya Startup University 1期生。 東京都女性ベンチャー成長促進事業 APT Women 7期生。 2014年に家族でシリコンバレーに移住、起業家向けのハッカーハウスをスタート。 7年間で60カ国、6,000人以上のゲストを迎えた。 その経験から言葉や世代、性別を超えた コミュニケーションを楽しむツールとして、coloridohをスタート。 2021年、味の素と小学館のアクセラレータープログラムに採択されたことを機に帰国。 生地の改良や工場探しを重ね、2022年9月、正式に日本でローンチ。 ママ起業家として絶賛奮闘中。
「子供との時間をもっと楽しく、親も一緒に夢中になれるものが欲しい」「アレルギーがあってもみんなで同じおやつを楽しめないか」
そんな母親の想いから生まれたのが、カラフルな粘土のようなクッキー生地「コロリドー」です。
これは単なるお菓子ではなく、「食べ物というよりもコミュニケーションツール」として開発されたプロダクトです。
子育て中の実感とキャリアの壁が原動力に
開発者である女性起業家は、4人のお子さんを育てる中で、自身を「良いママじゃないな」と感じることが多かったといいます。子供との遊びで「早く終わらないかな」と思ったり、同じことを何度も繰り返す子供に飽きたりする経験から、「親子が同じように楽しめるものが欲しかった」という強い願いが生まれました。
また、40歳になり、子育てに費やした10年間が「キャリアブランク」と見なされ、応募できる就職先がないという壁に直面しました。自分では子育てを通じて成長できたと感じているのに、それが正当に評価されないシステムに課題を感じたことも、起業への一歩を後押ししました。
「遊べるクッキー」コロリドの誕生
起業を決意した時点では、貯金はゼロでした。しかし、アレルギー対応の美味しいクッキーが少ないという自身の経験や、幼少期に粘土やクッキー生地で遊んだ楽しさから、「粘土もクッキーも世界で愛されているものだから、これはビジネスになる」と確信したのです。
シリコンバレーで7年間、起業家向けシェアハウスを運営し、多様な食のニーズ(グルテンフリーなど)に触れた経験も、製品開発に活かされました。
製品開発では多くの困難がありました。生地の状態へのこだわり、アレルギー対応、ビーガン対応、そして保存料なしでの常温保存。そして何より「美味しい」こと。これら全てのチェックポイントをクリアする必要があったため、開発は容易ではありませんでした。
しかし、試行錯誤の末に完成したコロリドーは、計量不要、洗い物不要、出して遊ぶだけという手軽さを実現。開発コンセプトは「ユニバーサル」であり、「本当に誰でも遊べる、誰でも使える、誰でも楽しいと思ってもらえる」ことを目指しています。
コミュニケーションツールとしての可能性
コロリドーは、子供だけでなく、パパやママも一緒に楽しむことができます。親が夢中になって作品を作る姿は、子供にとって新鮮な発見となり、コミュニケーションのきっかけにもなります。何を作るか迷ったときは、図鑑や絵本を持ってきて参考にすることも推奨しています。
開発者は、「私たちはクッキー生地屋さんとか食品メーカーになるつもりはない」と語ります。彼女たちがベンチマークとして見据えるのは、ブロック一つで世界一のおもちゃメーカーとなった「レゴ」のようなビジネスモデルです。将来的には、IPライセンスとのコラボレーションや教育プログラムの開発も視野に入れています。
世界へ広がる「一緒に楽しむ」文化
現在、日本でスタートしましたが、開発者は主要マーケットとしてアメリカやヨーロッパを考えています。これらの地域では、日本よりも子供と家で過ごす時間が長く、親が遊び方に困っているケースが多いからです。家でクッキーをオーブンで焼く文化も根付いており、粘土遊びも盛んであるため、コロリドーの受け入れられやすい素地があると考えています。
困難を乗り越えた起業家の学び
起業の過程では、資金調達(Kickstarterでのクラウドファンディングから開始)や、日本でのアクセラレータープログラムへの採択など、様々なステップがありました。アイデアに対する反響は概ねポジティブでしたが、根本的な課題もありました。
辛い経験も多かった一方で、「正解がない」ということを腹落ちさせ、困難や辛いと思った経験が後に力になることを実感しています。また、夫からの反対なども含め、全てのジャッジは自分自身のものであり、自己責任であるという感覚を持つようになったことが大きい変化だと述べています。良いか悪いかという判断も、その時と今とでは大きく違ってきているといいます。
「コロリド」は、子育ての経験から生まれた課題意識、そして困難を乗り越える起業家の情熱によって形作られました。性別や国籍を超えて、みんなで遊んで楽しめるコミュニケーションツールとして、世界に広がることを目指しています。